2019 . 10 . 16
とよファーム

鹿児島と豊丘村をつなぐご縁。鹿児島の太陽ガスと豊丘村の新たな取り組み

今回は、企業版ふるさと納税を通じて、豊丘村に寄附頂いた太陽ガスの小平 昇平さん、企画立案をした豊丘村役場の長谷川 雅さん、りんごの木の再生事業を行う丘の上ファーム原農園の原 昌紀さんにお話をお伺いしました。

豊丘村、鹿児島日置市の地域が抱える課題とは?

—— 最初にそれぞれの持つ現状と課題を聞いていきます。まずは長谷川さん、豊丘村全体の現状と課題はどういったことが挙げられますか?

豊丘村役場 長谷川 雅さん(以下:長谷川):人口減少ですね。人口が減少し、少子高齢化が進んでいくという図式は、どこの地方も共通の課題ですね。これが原因で農家の数が減少すると荒れた農地が増えていくという負のスパイラルが続いています。ここから先、人口が爆発的に増えるということは考えられないので、この負のスパイラルを脱却する術が、抜け出せないという状況ですね。

—— 次に原さん、豊丘村の農業の課題はどういったことが挙げられますか?

丘の上ファーム原農園 原 昌紀さん(以下:原):両親が農業をやっていて、小さい頃からそれを見て育ってきたので自然と憧れの気持ちがありました。成人して最初はサラリーマンをやってましたが、何かやってみたいなという想いがあって、脱サラして親を継ぐ形で就農しました。農業は体力的にも技術的にもやりがいはありますが、非常に大変な部分があります。実際就農してみると、総じてプレイヤーが高齢者ばかりで、10年後、20年後誰がやるんだろうとか、そもそも産業としてどうなっているんだろうとか考えると、容易に良くない未来が想像できます。農業をやる人の少なさ、高齢者の多さが現状の課題ですね。

—— 高齢者が増えることによって、農地も耕作放棄されていくんですよね?

:原くん頼むよって毎年毎年(農地管理を)頼まれることが多いです。農業をやめたいってことではなくて、腰が曲がって続けられない人が毎年毎年出てきて、就農してから何十年、何百年と続いてきた畑がなくなってしまったり、ソーラーに変わっちゃったりとか、農業自体に限界がきてますね。

長谷川:原因としては、やはり農業のイメージの問題だと思います。これまでこの地に生まれれば当たり前に農業をやっていたんですが、外に働きに出る人たちが一般的になってきています。これまで農業者は儲かっていても儲かってない雰囲気を出してたんですよね。ベテラン農家の方も、農業なんてやめといた方が良いと言いますし。そうなってしまうと当然、就職の選択肢に上らなくなってしまいます。儲からなければ誰もやらない、この現状を根本的に変えていかないと、たとえ農業に可能性を感じたとしてもやる人がいなくなってしまいます。農業は大変ですが、儲かればやる人は増えます。高校生や大学生のこれから就職する人たちに向けて、辛いイメージだけを出しても選択肢として選んでくれない。これをずっと何十年もやり続けてきて、さらに人口減少が追い討ちをかけ、どんどん間口が狭くなっているのが現状ですね。

—— 小平さんの住んでいる鹿児島でも、豊丘村と同じく人口減少、少子高齢化という課題はあるかと思いますが、豊丘村の現状を聞いてどう思いますか?

太陽ガスの小平 昇平さん(以下:小平):鹿児島も全く同じの状況です。地域として、高齢化の波も押し寄せていて就農者が減ってます。2035年になると太陽ガスの販売をしている日置市、いちき串木野市から約8,000人ぐらい人口が減少するとも言われています。(現状の人口:いちき串木野市 27,774人 / 日置市 75,505人)。太陽ガスはガスを販売する会社ですが、「うちのガスはよく燃えるとか、中華料理に合うガスです」とか差別化できない商材なんです。その中で差別化やブランディングを考えた時、うちは前身の会社からすると60年やってる会社なので、やはり地域というコミュニティでブランド化していく必要があると思いました。それでドイツ視察に行った時、地域公社が、電気、ガス、水を供給するビジネスをやっていて地域全体に必要とされていて、太陽ガスとしても同じように地域全体に必要とされる企業を目指そうと思いました。そこで日置市をエネルギーの街にしようと動き始め、色々な企業と関わっていく中で経済循環性のない地域おこしは存在しないんじゃないか?という考えに至り、2013年に水力発電を始めました。当時は太陽光発電が全盛期だったのに水力発電を選んだ理由は、水利権を持っている方、近くで農業してる方、水車のシステムの方、土木の方、役場の方など関わる人が多かったからで、地域のみんなでブランドを作ることができるので、これ以上の良いものはないと思いました。このコミュニティーを広げ、そこに経済循環性として、水力で発電した電気を還元していくという画を描いてみようということになったんです。こういった考え方が太陽ガスとしての地域との関わり方のベースだと考えています。

地域や企業、コアなファンを集めたい。

—— マーケティングの世界では、昔のマスメディアを利用し不特定多数の人にアプローチする考え方から、ターゲティングしてコアなファン、ロイヤルカスタマーをつくっていこうというが流れがありますよね。みなさんはどういった方法で新しいファンを獲得していっていますか?

長谷川:豊丘村もまさにそういう考えが基になっていて、東京や関西の大都市圏に行って、豊丘村と言われても知ってる人はほぼ居ません。この事実があるにも関わらず、誰でも良いから来てねってのが過去の広告だったんです。現在では、こんなのは広告じゃなくて、お金をかけるのであれば、誰をターゲットにしていくのか?ニーズはどこにあるのか?をしっかり調査し考えた上でターゲティングしていかなければならない。これは民間企業だけではなくて、地方の自治体がそれをやっていかないと生き残っていけないということは分かっていて、今まさに取り組んでいる最中ですね。

小平:僕も結局、人かなと思っていて、Googleで”日本一 ガス”とかって検索した時に何100〜何万と検索結果が出るじゃないですか。その中に太陽ガスが豊丘村のりんごの再生を応援している、豊丘村との新しい関係性ができ、ストーリーが紹介されることによって太陽ガスの取り組みとして知ってもらいブランド価値が少しでも上がる。それが一番だと思っています。

:うちもまさに同じで、お客さまに顔が見える関係づくりを心がけています。こだわりのあるりんごを作っているので、誰にでも美味しいと言ってもらえる自信はありますが、やはり先代から築き上げてきたお客様が居て、そういった顔の見える関係の方に食べて頂きたいという思いがあります。その現れか昨日今日一昨日と、(台風19号の影響は)大丈夫ですか?という電話が日本全国の方々からいっぱいかかってきました。ニュースで長野の大きな被害が流れてるので、お客さまも心配してくれたみたいですね。そういう時に誰に向けて作っているかを実感し、より良いものを作ろうと思う動機にもなりますね。今後は太陽ガスのような企業との関係づくりも含め、もっとうちのりんごを指名買いして頂けるような活動をしていきたいと思っています。

鹿児島と豊丘村をつなぐ新しいご縁。

—— この企業版ふるさと納税のプロジェクトに参加を決めた経緯を教えてください。

:僕は就農して色々な情報を得る中で、日経の記事でファームフェスのRE FARMを見つけました。RE FARMの事業というのは、企業が農場をネーミングライツで借りて利用し支援する仕組みです。その記事を持って、何か面白いことができないかと役場の長谷川さんに相談したことがきっかけです。それからファームフェスの方々に足を運んで頂いて、企業版ふるさと納税を活用した座組みで、できるんじゃないかってことで話を進めていきました。

長谷川:そうですね。豊丘村も農地を活用し、企業にとっての第二の故郷を作るという企業版ダーチャを研究してました。都会の企業だとストレスが多く、メンタルダウンで営業損失が首都圏だけで4兆円あると言われています。体験農業という形で社員の皆様のストレスを解消しながら、農業の大変さや、自然への対策など色々と工夫をしたり、チームで動いたりと、会社を良くする色々な要素があると思ってます。これを会社の社員研修などで提供しようというのが企業版ダーチャの基本的な枠組みです。しかしながら企業にアプローチする術がありませんでした。企業にいきなり農作業やりませんか?と全然知らない人が行ってもはてなマークになっちゃうじゃないですか?実は東京の企業に僕が何社か飛び込みで行ったことはあったんですけど、苦笑いされて終わりでした(笑)

一同:(笑)

長谷川:営業のノウハウもないし、これを売るのは難しいと暗礁に乗り上げかけた時期に、原くんからRE FARMの話を聞いて、最初はそれをダーチャにどう組み込もうと考えていました。それからファームフェスの方々に訪問頂いた時に企業版ふるさと納税を活用して、企業が参入するハードルを下げたらどうですか?という提案を受けました。僕は内閣府関係の担当をしているので、企業版ふるさと納税自体は説明も受けたことがあって知っていたんですけど、その時はまだ複雑な制度であまり活用されてませんでしたが、制度が緩和され、活用しやすくなったので、先日計画を立てて内閣府に申請し、認可を受けました。また来年あたりからもっと緩和される可能性があるので、タイミング的にはバッチリなタイミングでした。僕らが研究していたダーチャと、原くんが話を持ってきてくれたこと、ファームフェスが企業版ふるさと納税を提案してくれたことが合致したんです。

小平:我々が欲しかったのはご縁ですね。毎年11月に1万世帯ぐらいの人が来場するガスの大きなお客様イベントがあって、そこで配布するりんごを購入させてもらえないか?とも思ってます。日置のお客さまにあまりご縁がない土地のものを届けられる。こんな幸せなことはないと思っています。個人的に寒いところが好きですし、シードルを作ってるところも見学したいです。社員旅行などでも来てみたいですね。こういった新しい展開がこの企業版ふるさと納税の座組みの真意だと思います。

長谷川さん & 原さん:最高です!

—— 何か他にやってみたいことあります?

小平:太陽ガスは、ドイツで水力を学んだ人、元吉本の人、温泉旅館のマネージャーをやってた人などなど、いろんな事をやってた人材が集まっている会社なので、今後もし豊丘村がエネルギーのことで悩まれたりすることがあれば、僕らでよければ一緒にやらせてもらいたいです。エネルギーの話までいくとちょっと重いかもしれませんが、日置市と豊丘村の交流の橋渡しになってもおもしろいし、今日初めて豊丘村を訪問しましたが、今後色々広がっていくだろうとワクワクしています。

長谷川:豊丘村の農産物や、これから作る体験農場などをキーにだんだん色んな会社と繋がりができて、その方々と農家と行政が一堂に会するような場面も欲しいなと思っています。そこでまた新たなビジネスチャンスが生まれたりとか、普段付き合わない業種の皆さんと会ったりとか、その起点が豊丘村で、更にその仲介役が農家だったら最高じゃないですか。その化学反応が起きて豊丘村から一大ムーブメントになるんじゃないかなと、漠然とした夢物語のようなものは描いていますね。

小平:豊丘ファミリー的な?

長谷川:そうそうそう!なんかそんな事が起きたらおもしろくないですか!?何が起こるかわからない!そんなことを漠然と思い描いてます。夢物語だとは言われるかもしれないですけど(笑)

:僕は農家なので、豊丘の大切な自然の中で農産物を作るということが喜びです。この事業を通して、それがずっと継続できるようなモデルケースができれば、それを豊丘村以外のいろんなところで展開したいなと。農家が笑ってりんごを育てられる、そうすると栽培することに集中できて、元々美味しいりんごも、もっともっと美味しく作れると思うんですよね。それが農家として一番の喜びなので、そういったところで農家としての自己肯定感を大事に育てていけたらなと思ってます。鹿児島の農家さんとの交流とか、生産者として各地見てみたいなというのもありますね。

自然の恵みに感謝する気持ち。

—— 最後に原さんに、僕個人的な質問になっちゃうんですけど笑。今回原さんのところも台風被害が起きましたが、そこからどうやってまたやろう!ってスイッチを切り替えていますか?

:自然の恵みに感謝する気持ちが一番大事だと思っています。当たり前にりんごが育って、当たり前に雨が降って、天候が良くて収穫できるっていうのは、もうそれが自然の恵みをもらってるってことだと思うんで、例えば災害があったとしても(経営的なリスクはまた別ですが)、営みとしてはもうずっと歴史上繰り返されてきたものなので、りんごができるっていう喜び、それが当たり前じゃないんだなっていうことを認識していきたいです。

長谷川:僕は、業務の関係で都会の方と接する機会が多いんですが、話の中でさっき原さんが言った自然の恵みに感謝するって意識は薄れてきてると感じますね。当たり前に食べられるものじゃなくて、特に東京など、大都市圏の皆さんはなんとなく田舎を助けてあげなきゃみたいな雰囲気になってません?でもそうじゃなくて田舎が潰れる前に都会が潰れるんですよ。田舎で供給できるものがなくなったら、自分のところで蓄えますからね。今その供給する側の地方の人口が減少し、農家も減少していっていることに、都会の人たちが一番危機感を最初に感じないといけないんだけど、なんとなく他人事になっちゃってることを、この事業をきっかけに知ってもらいたいですね。あとは農家の価値が欧米に比べてやっぱり低い、農家がいなかったらどうやって食っていくんだって話なので、そこも見る目を変えたいし、こういう事業がきっかけになってくれればありがたいと思ってますね。

:今回で僕の農地もぼこぼこなんですけど、それもどうにかしていかないと、人を雇用してるところもあるので、僕が暗くなってもしょうがないかなと(笑)まあ、やる人はやりますからね(笑)