2020 . 06 . 04
とよファーム

りんご畑の未来を耕すお仕事。りんごの苗木づくりレポート

<※新型コロナの影響を受け、ママさんライターの動きがストップしてしまい、3月末に取材した原稿がようやく上がってききました。読者のみなさまにご心配をおかけしてしまい大変申し訳ございませんでした。>

はじめまして!「ぽてこ」といいます。在宅で働くママさんチームのマネージャーをしています。
新型コロナが完全に落ち着いた訳ではありませんが、少しずつ活動できるようになり、原稿を書ける余裕が出始めました。取材から原稿を出す前に期間が空いてしまいましたが、どうぞ一読くださいませ。普段は四六時中パソコンの画面に張り付くような仕事をしていて(汗)、農家の方のお仕事を意識したことはありませんでした。取材を通じて農業の大変さを学びながら、感じたことを読者の皆さんにもお届けできればと思います。よろしくお願いいたします。
前回の記事では、冬の間の大切な作業として、枝の剪定と片付けをご紹介しました。春が近づき気候も緩んでくるとりんごの「苗木づくり」が行われるということで、3月末に原農園さんにお邪魔しました。

大きなりんごの木も、最初は小さな苗木から

大きくて立派なりんごの木も、最初は小さな苗木を植えるところからスタートします。毎年果実を付けてくれるりんごの木も、いつかは枯れてしまったり、弱ってしまったり、病気になってしまうそうで、苗木の補充は春先の大切な作業の一つです。今年のことだけでなく、数年後の収穫を見据えた対応もしていく必要があるんですね。

苗木は自前で用意

りんごの苗木は苗木屋さんから買うこともできるのですが、原農園さんほどの規模だと大変な金額になってしまいます。新規でさらにりんご園を作ろうとすればさらに費用がかかります。そこで原農園さんでは(新品種を除いて)苗木は自らの農園でつくっていらっしゃるそうです。経費を削減する工夫をされているのですね。 取材初日はちょうど雨で畑仕事はできず作業場の中で苗木づくりをすることになり、その様子を見せていただくことができました。

原さんによる実演

りんごの苗木は、地面に植える「台木」とそこに組み合わせる挿し木である「穂木(ほぎ)」から成ります。台木は40〜50cmほどの長さで、今回使ったのは「M9」と呼ばれる品種です。これは、最近よく見かける縦にスウッと伸びて垣根のよう植わっている種類のりんごの木になります。木が大きくならないのに、りんごの実をつけるのが早い(といっても最低3年はかかるそうですが)、生産性の高い木だそうです。
組み合わせる穂木は長さが10cmほどしかなく、芽らしきものも2つしかありませんが、芽が1つあれば問題ないそうです。ただし、向きを間違えないように注意。穂木は斜めに切り落とし、台木には切れ目を入れ、それぞれにオスとメスになるようにつなぎ合わせます。斜めに切り落とした穂木の断面をよ〜く見ると、表皮に近いところに色が濃くなった層があります。これを「形成層」といい、いわば血管のようなものだそうです。台木と穂木、それぞれの形成層がつながることで苗木が育ち、芽が出てきます。ポイントは、台木と穂木の太さを合わせること、そして切込みを真ん中ではなくちょっと外側にズラすのだそうです。
つなぎ合わせたら「メデール」というテープでぐるぐると巻きます。また、穂木の先端には乾燥防止剤も塗ります。これで、畑に植える準備ができました!

原農園さんでは、この台木と穂木の組み合わせで今年は6、7種類ほどの苗木をつくるとのこと。木が大きくなる種類のものや凍害に強いもの、シードル用の品種など、台木と穂木の組み合わせで様々なバリエーションの苗木をつくることができるそうです。 今日は特別に原さんに一連の作業を見せていただきましたが、本来は数人で分業して苗木を作り、晴れたらすぐに畑に植えるという2日がかりのお仕事です。毎年500〜1000本…この日も午前中だけで300本作る予定とのことでした。

苗木を植える

取材二日目、作業場でつくった苗木を圃場に植えます。あらかじめ整えられた圃場には「マルチ」と呼ばれる黒いシートが張られ、20cm間隔で穴が開けられています。スタッフの皆さんで手分けして苗木を穴に入れ、根本を土で埋めていきます。皆さん、和やかに会話をしながらもテキパキと進めていきます。

植えた苗木から根が出ると、水道の蛇口をひねるイメージで土から栄養が上に吸い上げられ、先端のほうから成長していくそうです。今年植えたものは、一年で10cm成長。さらにもう一年、合計二年、このマルチが張られた苗木圃場で育てます。こうして植えた苗木も、苗木の段階で枯れてしまうものもたくさんあるようで、そのことも計算に入れた数の苗木を植えるそうです。その後、本来の農地に移して育てられ、3年目ぐらいで、まだ木は小さく収穫量も少ないですが、りんごが成るそうです。そして毎年手を入れながら、5年でようやくりんごの木らしくなりますが、まだまだ。10年経ってようやく本来の大きさになるそうです。自然相手なので、根気のいる仕事ですね。
りんご栽培は目線より高い位置の作業が多いイメージでしたが、今回は地面と向き合うような目線の作業でした。どんな植物も土があってこそ育つものですよね。りんごも、それは同じです。

桃の摘蕾(てきらい)

原農園さんでは、りんごの他に桃も栽培していらっしゃいます。りんごの苗木を植え終わった後、スタッフの皆さんはすぐ近くの桃の果樹園に移動し、桃の摘蕾作業が始まったので、その様子も少しだけ見せていただきました。摘蕾とは、桃の花がまだ蕾のうちに、一番良さそうな蕾だけ残して他は摘んでしまう作業です。こうすることで、大きくて立派な桃を育てることができるそうです。ピンク色の桃の花はすでに咲きかけていて、りんごよりも一足先に、春がやってきたようです。
これから花が咲くと、また忙しくなっていくとのこと。前回と今回、冬〜春先の作業を取材して感じたことは、おもてからは見えにくい作業の多さと大切さでした。りんごの苗木が植わっている様子なんて、想像したことすらありませんでした。経費削減、数年後を見据えた計画、多様な品種を植えることでリスク分散したりと、毎年同じことの繰り返しのように見えて、その裏側ではたゆまぬ努力をされているのだなぁと感心しました。 次回の取材は、おそらくりんごの花も咲いている頃で、その美しい光景をお届けできると思います。ぜひご期待ください。

原さんの経営している「丘の上さくらんぼ園」では、そろそろ(7〜9月)さくらんぼ狩りの時期です。新型コロナがもう少し落ち着いてきたらぜひ足を運んでみてください。

■ 豊丘村「丘の上さくらんぼ園」
https://www.okanouecherryfarm.com/farm